香港法人ガイド ― 新会社条例(2014年3月
アジア・パシフィック地域に設立された多くの法人は香港に本籍地を置いています。香港でのビジネスはよくタックス・フリー(非課税)と称されることがありますが、それは源泉所得に対して属地主義をとっており、香港を源泉としない所得に対しては原則として非課税としているからです。ただし、香港にて課税されないようにするにはビジネスの組み立て方に十分な注意を払うことも必要です。
香港法人を設立する意義と他のオフショアで設立する意義の一番の違いは、香港経済が貿易を中心として確立していることです。特に中国を含むアジア・パシフィック地域が絡むビジネスの活動場としては香港にビジネス拠点を持つことは自然な選択といえます。
香港では非公開会社(私的会社)と公開会社の2種類の法人設立ができます。香港にで現在登録されている会社のほとんどは非公開会社です。
ゼットランドはE-設立サービスを提供しています。これにより法人設立が1日で可能になりました。
香港法人の設立、管理・維持、会社清算などは香港会社条例(Companies Ordinance)に基づいています。
会社名の決定または会社名変更に対し、会社登記所ではいくつかの規定があります。名前は固有のものであり、登記所に未登録な名前であること、「銀行」などの名詞は使えない、などです。商号は英語または中国語の使用が可能で、最後に必ず「Limited(日本語で、株式会社)」がつきます。
法人設立をお急ぎの方にはシェルフ会社をご購入いただくという方法もあります。シェルフ会社というのは既に登記されている会社でビジネスを開始していない会社のことです。シェルフとは「棚」という意味で、すぐ購入できるという意味合いからそのような名前がついています。ご購入後、商号を変更することが可能です。
(*)ただし銀行口座付きのシェルフカンパニーはなく、また費用は古くなればなるほど新規設立より高額になるため、特に古い法人をお求めの理由がない限り、シェルフを利用される意味はありません。
香港ではサービスやトレードマークの登録も受け付けており、知的財産保護も確立されています。
株主は1名以上から登記可能です。株主は個人または法人が可能で国籍や居住国についての制限はありません。
取締役は1名以上から登記可能。取締役は個人または法人が可能で国籍や居住国についての制限はありません。ただし非公開会社では、必ず最低1名の個人取締役の選任が必要です。
香港では全ての会社において現地居住の会社秘書役(カンパニー・セクレタリー)の選任が義務付けられています。秘書役は年次報告書や株主総会報告書の作成・提出をはじめ法的書類の作成・登記・保管をする役割を担っています。ゼットランド・セクレタリーズ・リミティド(Zetland Secretaries Limited)は法人格の秘書役として秘書役サービスを提供しております。
香港法人は香港に本籍登記住所を持つことが決められています。
(*ゼットランドの香港オフィスの住所を顧客様の香港法人の本籍住所として提供させていただいています)
資本金は最低及び最高額の設定がありません。2013年に施行された新条例により授権資本制(Authorized Capital)が廃止になりました。よって最低株券の1株のみ発行され、それは個人株主または法人株主によって所有されます。また、ノミニー株主を利用することにより株主の情報が一般に公開されることはなくなります。
資本の払い込み方法は現金やその他の手段が可能です。資本税は2012年6月に廃止されました。現在では株券移行の際に課せられる印紙税(0.2%)のみとなります。資本金は香港ドル以外の通貨建てでも可能です。
株式譲渡に関し、非公開会社は取締役の許可承諾が必要です。株式譲渡の際に支払う印紙税は売買代金と株式時価のいずれかの高い額で支払われ、税務局へ会計帳簿提出が求められます。まだビジネスを開始していない会社についてはこれが免除され、秘書役の承認のみで株式譲渡が受理されます。
各法人の定款にて会社運営方法が定められます。香港会社条例によりある一定の基本規定を定款に取り組むことが定められていますが、日常業務においては柔軟性を持たせています。ゼットランドが作成・提供する定款原稿はオペレーションの簡潔化を目指したものとなっています。
香港法人は年次報告書の提出が義務づけられています。年次報告書の内容は取締役・株主情報の更新などが含まれています。年次報告書は公開されます。
海外にて登記設立済みの企業が香港にて支店を設立する場合、支店オフィスを設置後一ヶ月以内に必要手続きを踏まなければなりません。代表者は手続きの間、香港に滞在し対応することが便宜上望ましいと思われます。全ての手続き完了後、登記所から14日以内に商業登記証(Certificate of Registration)が発行されます。会社はこの他に事業登記(Business Registration Service)の取得が必要です。両方とも商業登記所にて一括で申請・取得ができます。また、香港では慣例として会社の商号が入ったネームプレートをオフィス入り口などに飾っておくことも求められています。
支店も現地法人と同じく毎年商業登録の更新が必要です。また年次報告書(Annual Return)、雇用報告書(Employer’s Return)、税務報告書(Tax Return)の提出も現地法人と同じく義務付けられています。本社本籍地にて財務諸表の提出が義務付けられている場合において香港側にて支店の年次報告書を提出の際に、支店の財務諸表の提出も求められます。
ビジネス業務の開始は会社設立直後に開始可能です。法人銀行口座の開設は通常1~2か月かかりますが、その間に契約書の締結などを行なうことは可能です。
ゼットランドでは業務をすぐにでも始められるよう、ご要望にそって電話ラインやファックス番号の貸し出し、またはメールドメインの登録やレターヘッドの作成及びインボイスの作成などのサポートも行なっております。
また、香港ではノミニー設立が行なわれても会社業務はPower of Attorney(委任状)で委任された真の会社オーナーが行なうのが通常です。
会社に株主が複数いる場合、会社設立時に株券の廃止や配当などを含む詳細事項をShareholder’s Agreement(株主の同意書)で定めておくことも重要です。
香港法人は全て会計帳簿(決算書、財務諸表)を作成し保管する義務があります。
また、すべての法人において外部監査法人による会計監査を受けることも義務付けられています。監査は会社の決算月から6ヶ月以内に行なわれることとし、会計書類や記録は取締役の承認があれば香港外で管理保存することも可能です。
監査を受けた会計帳簿は公開されることはありません。ただし小企業以外は会計帳簿を税務報告書と共に税務署へ提出する必要があります。小企業の場合は提出の必要はなく会社保管のみが求められます。
小企業の定義は、a)年間売り上げが1億香港ドル以下、 b)または資産総額が1億香港ドル以下、 c)または100人以下の雇用者、のうち二つの条件を満たしている場合です。
以下に当てはまる会社は簡便財務諸表(Simplified Financial and Director’s Report) の準備のみが求められます。
簡便財務諸表は、小企業において事務負担を免除する考慮から生まれた簡便な会計基準になります。
香港において会社の任意解散手続きは難しくありませんが、それでも清算手続きはかかります。その複雑さは財務諸表の複雑さや債務の有無などによりますが、一番手っ取り早い方法は登記抹消手続きを取ることです。ただし、登記抹消手続きにも時間がかかり、抹消手続き中は会社状態は臨時として存在し続けることが必要です。
香港における税制は比較的シンプルなもので、主に2種類に分けられます。
給与所得税-個人の所得に対して 事業所得税-事業所得に対して
また資産所得税、印紙税、関税などもありますが売上税はありません。また、相続税は2005年に廃止されました。
*ゼットランドではゼットランド・タックス・アドバイザーズ(同グループ下の税理法人)にて香港や中国の税務アドバイスを行っております。お気軽にご相談ください。
事業所得税は16.5%です。香港を源泉とする所得にのみ課税されます。キャピタルゲインは非課税です。経費は損金算入とされ固定資産についても減却償却費手当てなどの税制スキーム上の特別処置があります。金融機関についての香港内の所得については、香港税務局による「基本原理」が適応されるケースも見られます。
香港にて課税されるべき利益や所得に関する問題は事実と状況判断によるため様々な判例法が存在します、よって取引・売買のストラクチャリングは、事前に税理士への相談が必要です。
法人向け税務申告書は毎年4月頃に送られてきます。新しく設立された会社については、設立日より18ヵ月後に送られてきます。第一回の決算月は、設立日より18ヶ月を超えてはならず、税務申告書はたとえ非活動な会社でも提出義務があります。
*ゼットランドではゼットランド・タックス・アドバイザーズ(同グループ下の税理法人)にて香港や中国の税務アドバイスを行っております。お気軽にご相談ください。
香港では香港外の源泉所得に対して非課税方式をとっているため、二重課税の問題はほとんど発生しません。しかし、香港は2001年から今まで29カ国と租税条約(二重課税防止条約)を結んでいます。租税条約を提携している国でビジネス活動をする香港法人は、利益を還元する際の源泉徴収税の減税などを享受することができます。
2913年7月10日、香港は更に「Standalone Tax Information Treaty(租税情報交換条約)」に署名しました。
ロイヤリティーや利息支払いに関しては注意が必要ですが、香港法人をオフショア法人としてこのような支払いに利用することも可能です。
香港と租税条約を締結している29カ国の内、26カ国とは既に条約に批准しています。
(2013年更新分)
国 | 配当(%) | 利子(%) | ロイヤリティー(%) |
---|---|---|---|
Austria | 0 / 10 | 0 | 3 |
Belgium | 0 / 5 / 15 | 10 | 5 |
Brunei | 0 | 0 / 5 / 10 | 5 |
Canada | 5 / 15 | 10 | 10 |
China | 5 / 7 | 0 / 7 | 7 |
Czech Republic | 5 | 0 | 10 |
France | 10 | 0 / 10 | 10 |
Guernsey* | 0 | 0 | 4 |
Hungary | 5 / 10 | 0 / 5 | 5 |
Indonesia | 5 /10 | 0 / 10 | 5 |
Ireland | 0 | 0 / 10 | 3 |
Italy* | 10 | 12.5 | 15 |
Japan | 5 / 10 | 0 / 10 | 5 |
Jersey | 0 | 0 | 4 |
Kuwait | 5 | 5 | 5 |
Liechtenstein | 0 | 0 | 3 |
Luxembourg | 0 / 10 | 0 | 3 |
Malaysia | 5 / 10 | 10 | 8 |
Malta | 0 | 0 | 3 |
Mexico | 0 | 0 / 10 | 10 |
Netherlands | 0 / 10 | 0 | 3 |
New Zealand | 0 / 5 / 15 | 0 / 10 | 5 |
Portugal | 5 / 10 | 0 / 10 | 5 |
Qatar* | 0 | 0 | 5 |
Spain | 0 / 10 | 0 / 5 | 5 |
Switzerland | 0 / 10 | 0 | 3 |
Thailand | 10 | 0 / 10 / 15 | 5 / 10 / 15 |
UK | 0 / 15 | 0 | 3 |
Vietnam | 10 | 0 / 10 | 7 / 10 |
香港は世界でも有数な金融センターの一つとして有名です。200以上の認定された金融機関が香港内外に存在します。
邦銀やその他の国の銀行機関が多く香港に活動拠点を持っている他、ヨーロッパや北アメリカのメガバンクも香港を拠点にオペレーションをしています。香港にて最大のローカル銀行は今ではロンドンに本社を移しましたがHSBC(香港上海銀行)です。その他ではスタンダードチャーター銀行や中国銀行グループもあります。
香港の銀行は特に貿易金融や不動産抵当貸付や外国為替取引に強く、また全ての主要通貨での預金が可能です。
香港はアジア地区において融資元という役割も大きく担っています。ただし融資はアジアでのビジネスを拠点とする事業や銀行との関係を既に大きく築いているいる会社などに限られており、新しい会社においてはその条件が厳しくなります。
香港は中国の通貨である人民元の世界初で且つ重要なオフショア金融センターであり、正式に人民元の流通が規定された市場でもあります。香港内で人民元による金融サービスが広く設けられており人民元による預金や送金、貿易金融通貨としての利用ならびに外国為替契約、債券発行、ローンの組み立て、投資信託やその他の人民元による金融商品の売買も行なわれています。
人民元貿易取引スキームを通しての貿易やサービスに対する人民元での支払いは中国政府を一切通すことなく24時間以内の決済が可能です。人民元によるFXフォワード取引、オプションや先物契約、利息や金利スワップなども為替相場リスクのヘッジに有効です。
中国本土でのプロジェクトやオペレーションに必要な資本金は中国本土以外のオフショアで収集が可能です。その資本金は中国のFIEキャピタルアカウントに直接送金することが可能です。
*ゼットランドでは上海にオフィスを置き中国におけるビジネスのサポートも行っております。お気軽にご相談ください。
香港内の銀行及び香港外のオフショア銀行にて開設するには適切な書類準備が必要です。すべての銀行においてKYC(身元確認)が徹底されており、会社の最終受益者の情報提供が必要です。香港金融管理局の規定により、香港内の銀行では法人口座開設時に取締役全員と最終受益者が銀行面談に出向くことが要求されています。
マネーロンダリングに対する取締り強化に従がった身元確認も厳しくなっています。口座署名人(サイナー)は香港居住者以外でもなれます。非居住者のサイナーは認証済パスポートの提示が必要です。
ほとんどの銀行機関にてネットバンキングのご利用が可能です。
香港では通常の預金や当座口座の開設以外にも、信用状発行や輸入ローンの組み立てなど、ケースによって交渉が必要になってきますが各種サービスの利用が可能です。新規設立の会社においてはバック・ツー・バック信用状やキャッシュ・コラテラルを条件に同サービスの提供を受ける事も可能です。
香港内の銀行窓口及び事業所の営業時間は月~金の午前9時から午後5時までとなっています。土曜日は午前9時から午後1時までです。祭日・休日はお休みです。また台風シグナルの強度により閉まる場合もありますためご注意ください。(ATMは24時間ご利用可能です)
ゼットランドでは弊社にて法人設立していただいたお客様に対して香港内外における銀行の口座開設と管理サービスを提供しています。
香港主要機関のホームページ(内容:英文及び中文):
The following websites have additional information on Hong Kong: