Japanese Newsletter - November 2020
2020年11月号
Dear Friends of Zetland
(当ニュースレターはご購読手続きをいただいた方や過去に名刺を交換させていただいた方へ配信しております。配信停止をご希望の際にはお手数ですが、本ページ一番下の「Unsubscribe」(配信停止)をクリックいただくか、弊社までご連絡願います。)
弊社では数か月毎にニュースレターを英文で発行しており、遅れて日本語翻訳版を発行しております。
いつもご購読ありがとうございます。先月ニュースレターを発行した際に、こちらイギリスでは3月に起こった全国ロックダウンは行わないとの政府の発表をそのままお話差し上げましたが、なんのその、また全国ロックダウンになってしまいました。今回は1か月間との予定付きで、12月2日にはロックダウンが解除されることになっていますが、どうなるかは予測不可能です。
どの国もコロナ対策には苦労させられていますが、イギリスの場合はロックダウンをするしないで何度も政府方針が変わるため、やはりワクチンができるまでは普通には戻らないという構えが一般意見になってきています。相変わらずほどんとのオフィスワーカーは自宅勤務をしています。
香港では感染者数も欧米に比べてずっと少なく、国内のコロナ対策も一時に比べて随分緩やかになりました。ただし、海外からの帰国者に対する規制は更に厳しくなり、今までは香港へ入国できるのは一部をのぞく居住者のみ、空港で全員PCR検査を受け、陰性となった場合のみ空港を離れることができ、その後は自宅で強制待機でした。手首にはリストバンドを付けられ、自宅から出ないよう監視されます。これが最近になって、自宅ではなく全員強制ホテル隔離に変更しました。ホテル代は自費です。よって夏には自宅隔離を覚悟で自国に帰省していた外国人居住者なども、これでなかなか香港外に出ることが難しくなりました。また、ホテル滞在といっても当然ですが、部屋から一歩も出られずプール施設も何も使えないということになります。
香港といえば、ご存知の通り今年7月に中国より国家安全法が突然執行され、日本のお客様からも戸惑ったお声や質問をたくさん受けました。内容は、「これから香港はどうなるのか」「香港に信託や資産を残して安全なのか」「御社はこれからも香港にいるのですか」などです。
以下はわたくしの全くの個人意見になりますが、コメントさせていただきたいと思います。
まず「これから香港はどうなるのか」については、日本でも報道されているためある程度の意見や予想といった情報が得られるのではないかと思います。直近のブルーンバーグ紙の記事によれば、香港の民主派弾圧と対比するかの勢いで中国企業の香港での上場案件がバタバタと増えているとのことです。記事によれば民主派は明日逮捕されるかもしれない不安と共に眠れぬ夜を過ごし、その一方でバンカーは仕事が増えたので夜遅くまでオフィスで残業している、という状態が現在の香港であるとのことでした。この傾向は今後も続くとみられます。
「香港に信託や資産を残して安全なのか」についてですが、弊社は香港やニュージーランドで受託者ライセンスを有し、信託設定や受託者サービスを提供しています。まず、例えば香港で信託を設定される場合、資産も香港という例は少ないかと思います。信託に預託される資産、つまりプライベートバンク口座や証券口座やその他の投資口座はスイスや香港外にある場合が多いです。よってお客様のご心配として「自分の資産が中国から突然凍結されないか」という質問を受けますが、そのような理由からご心配される必要はないと思われます。
次に信託制度ですが、これは香港がイギリスの植民地であった経歴から、イギリスと同じコモンローという法体系を採用しており、香港で設定される信託はコモンローに基づく設定になります。これに対して中国本土では日本と同じ大陸法(Civil Law)を採用しているのと対照的です。今のところ、という言い方しかできませんが、中国は香港のコモンローまで変えようとはしていないため、その点で言えば信託制度は引き続き問題なくご利用いただけます。では、2047年になって香港が中国へ完全返還されたらどうなるのかですが、その際にコモンローが大陸法に切り替えられるのことは多いに予想できます。では信託制度はどうなるのか、これは現時点においてたとえ香港政府でも回答はできないかと思います。ただ、信託は設立国の変更が可能です。これを設立の際に設定書に盛り込んでおくことで、信託設定後に香港から他国に信託籍を移籍することが可能となるため、これもご心配はいらないかと思います。
ただし香港以外の信託設定にご興味のある方のために、本ニュースレターではニュージーランド信託を扱っています。ただしニュージーランド信託は設定や維持費も香港信託に比べて割高で、その点だけでも香港信託はまだまだ魅力的です。
最後に、「御社はこれからも香港にいるのですか」ですが弊社は80年代より香港に本社を置き、香港を拠点にシンガポールや上海で活動してきました。国家安全法以来、キャピタルフライトなども心配される今の香港ですが、例えばですが、数十年前の香港は製造拠点を中国に失いました。今ではMade in Chinaは当たり前ですが、昔は香港にも工場が数多くあったのです。それがほぼ全て中国に移転しましたが、マネージメント部門は香港に残り続けました。つまり、製造拠点は中国でも、製造管理をしているのは香港オフィスという形です。これを、『Made in ChinaだけどMade by Hong Kong』という言い方をしてきました。先ほど、中国からの資本で香港金融界が沸いているというお話をしましたが、たとえこれから中国以外の企業によるキャピタルフライトが香港で起こったとしても、香港はマネージメント部門で生き残る予感は多いにあります。というのも、香港は資産管理や金融のプロが多くインフラが整っているからで、今日明日でこのインフラが消えることはありません。信託の部分でもお話を差し上げましたが、資産は香港外でも信託は香港で引き続きマネージメントさせていただけると思います。
その点、弊社支店もあるシンガポールも同じく資産管理や金融のインフラが整っており、また税制も香港並みに低いですが、日本のお客様からすると物理的に多少遠く感じられると思います。香港は東京から3時間半、日本からすぐ来られるというのも魅力ですし、中国本土への投資の入り口という意味でも今後も残っていく場所であると思います。
本ニュースレターの記事でも扱っていますが、香港籍のファンド組成が可能になりました。今まではファンド組成はケイマン島などで行い、香港のファンドマネージャーが運用するなどの形を取っていましたが、これで香港でファンド自体を組成、マネージメントも香港という一括体制が取れるようになりました。
と言いうわけで、弊社は引き続き香港を拠点に活動をしてまいりますため、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
(弊社ではジャパンデスクにて日本のお客様を日本語でサポートしております。お問い合わせは日本語でまで)
日本語ウェブサイト:https://zetland.jp/
石垣
Zetland Fiduciary Group Limited
(2020年11月18日、ロンドン支店より)